科学的な真実の解明により、安全・安心な社会の構築を
ご挨拶
幼いとき、隣に法医学の先生が住んでおられたので、夕食後、遊びに行って法医学の「講義」をよく聴いたものです。今から思えば変な話ですが、そういった経験が、私の人生を大きく変えたのかもしれません。卒業してから11年間は、病理診断科の医師として、癌の研究をしていましたが、その後、法医学に転進し、今は、法医学の教授をしています。
法医学では、捜査の手掛かりや裁判のための証拠をみつけだし、事件の解決や犯罪の抑制にとり組んでいます。また、鑑定は、法的紛争の解決や社会保障・保険の正しい適用にも用いられます。そして、事故原因の究明は、みんなの願いである事故の抑止や再発防止策の検討において、最も重要なステップでもあります。このように、法医学の仕事は、「科学的な真実」を解明して、個々の事件を解決するだけでなく、社会全体にも働きかけ、安全・安心な社会の構築に貢献することです。
法医鑑定の結果は、事件や事故の加害者や被害者をはじめ、利害が対立している多くの人々の生活に、社会的に深く関係してきます。したがって、正しいことはもとより、誰にでも納得してもらうことができるように、確かでわかりやすいものでなくてはなりません。そのためには、より客観性、説得性の高い科学的な診断法の開発が必要となってきます。
現在、私の研究室では、その一環として、死後経過時間に関する研究、転落の高さの推定に関する研究 、胃内容物の分子生物学的決定法などの客観的診断法の開発の研究を進めてきています。若い優秀な教室員とともに歩むことによって、21世紀の法医学を展開できればと思っています。

慶應義塾大学医学部 法医学教室
教室主任 教授 藤田眞幸
Masaki Q. Fujita, MD, PhD
Professor and Chairman
Department of Legal Medicine
(Forensic Medicine)
Keio University School of Medicine
Tokyo, Japan
日本学術会議連携会員 (第20 期: 2006~2008),第47 回日本犯罪学会総会会長 (2010),日本賠償科学会第76回研究会会長(2021),インド太平洋法科学会議(INPALMS) Vice President (2016~2019),
日本学術会議連携会員(第24期~27期: 2017~現在)・日本学術会議法医学分科会委員長(第24期・25期),日本犯罪学会理事(2009~現在)・日本犯罪学会理事長(2018.4~2024.3),『犯罪学雑誌』編集顧問(2018~現在), 日本賠償科学会理事(2019~現在),日本臨床医学リスクマネジメント学会常務理事(2012~現在)・『安全医学』編集委員長(2009~現在),インド太平洋法科学会議(INPALMS) Vice President (2022~現在)など.
日本法医学会法医認定医,日本専門医機構 病理専門医・日本病理学会 病理専門医研修指導医,日本医師会認定産業医,日本病院会医療安全管理者,日本人間ドック・予防医療医学会認定医,東京地方検察庁・警視庁鑑定人 など.
宮城県警察本部刑事部長 表彰 (感謝状:医療事故鑑定) (2013)
日本犯罪学会賞 (2013)
航空自衛隊 航空支援集団司令官 空将 表彰 (感謝状: 航空機事故鑑定) (2017)
航空自衛隊三沢基地司令 空将補 表彰 (感謝状: 航空機事故鑑定) (2019)
2020年度慶應義塾大学医学部ベストティーチャー・アワード第3位(2021)
2021年度慶應義塾大学医学部ベストティーチャー(2022)
2022年度慶應義塾大学医学部ベストティーチャー(2023)
2023年度慶應義塾大学医学部ベストティーチャー(2024)
医学教育貢献賞 (慶應義塾大学医学部 Outstanding Teacher Award) ( 2024)
など
医療関連死—医事紛争をめぐる法医学者の視点 (医歯薬出版 2016)

臨床法医学テキスト第2版 (中外医学社 2012) (共著)
治療のための病理診断学 (南山堂 1994) (共著) など